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コラム

データセンター設備の主な騒音源と効果的な騒音対策

近年、都市部を中心にデータセンターの建設が増加しています。それに伴い、近隣住民との騒音トラブルも増えており、施設の設計・運営において騒音対策は避けて通れない課題となっています。

前回の記事では、データセンターにおける騒音問題の概要と、対策が求められる背景について解説しました。今回は、「データセンターの具体的な騒音対策」に焦点を当てて解説します。
 
データセンターの騒音対策は、単に防音壁を設置すれば解決するというものではありません。
騒音の種類や発生源の特性、そして換気・排熱といった設備要件を踏まえた上で、適切な手法を選択することが重要です。
 
本記事では、騒音対策の基本的な考え方から、騒音源ごとの具体的な対策手法、そして対策が難しいとされる非常用発電機の騒音対応などをご紹介します。
ぜひ最後までご覧ください。

騒音対策の基本的な考え方

まずは、騒音対策の基本的な考え方について整理しておきましょう。
騒音対策には、大きく分けて「遮音」「吸音」「防振」の3つのアプローチがあります。それぞれの特徴を理解した上で、適切に組み合わせることで、より効果的な防音効果を実現できます。
 
◾️遮音
遮音とは、防音壁や防音パネルなどを使用して音の伝搬経路を物理的に遮断する方法です。比較的オーソドックスな手法で、古くから騒音対策の手段として使われてきました。
壁や板で音を遮ることで、中〜高周波音に対して10〜20dB程度の低減効果があります。ただし、ただ遮音壁を設置するだけでは、反射した音が増幅して隙間からの音漏れや、音が壁を回り込み外部に伝わることもあるので、その点は注意が必要です。
 
◾️吸音
吸音は、サイレンサー(消音器)や吸音パネルなどを用いて音のエネルギーを吸収・減衰させる方法です
グラスウールやウレタンフォームのような細かい繊維や気泡を持つ素材に音波が入り込み、内部の摩擦によって音エネルギーが弱まる仕組みが一般的です。空気の流れを確保しながら騒音を低減できるため、発電機や空調機のように開口部が必要な設備の騒音対策に適しています。
 
◾️防振
防振とは、振動源と構造体の間にクッション材を挟むことで振動が構造体を伝わるのを防ぐ方法です。
振動への対策は見落としがちですが、床や壁を伝わって予想外の場所で音として放射されることもあるため、重要な対策のひとつです。
防振ゴムや防振架台などを用いて振動の伝達を遮断することで、構造伝搬音(建物を伝わる振動による騒音)を低減します。特にコンプレッサーやポンプ、発電機など振動を発生させる機器への対策として有効です。

実際の騒音対策では、これら3つのアプローチを騒音源の特性や現場条件に応じて適切に組み合わせることが成功の鍵となります。

騒音源別の対策手法① 空調室外機の対策

遮音・吸音・防振という騒音への3つのアプローチは、具体的にどのように騒音対策に活かされるのでしょうか。ここからは、データセンターの主な騒音源である空調室外機・チラー・非常用発電機に対する具体的な対策方法を見ていきましょう。

まず「空調室外機」の騒音対策についてです。
24時間稼働し続けるデータセンターの空調室外機は、定常的な騒音の代表格とも言えるものです。空調室外機の騒音は、主に以下の手法を組み合わせて対策を行います。
 
1. 防音壁による囲い込み
防音壁による騒音対策では、原則として室外機の四方囲いを基本としますが、設置場所や周辺環境、建物条件によっては三方囲い(コの字型)とするケースもあります。いずれの場合も、騒音の回り込みを抑えるため、周囲条件に応じた囲い方の検討が重要です。
防音壁の高さは一律に決めるものではなく、敷地境界で求められる目標騒音値から逆算して設計します。あわせて、室外機のメンテナンス動線や搬出入条件を考慮し、点検・更新作業に支障が出ない配置とすることも欠かせません。
また、防音壁を室外機に近接させすぎると、排熱が滞留し、ショートサーキット(排気の再吸込み)を引き起こすおそれがあります。冷却性能の低下や機器トラブルにつながる可能性があるため、壁との離隔距離や開口計画を含め、事前の綿密な検討が非常に重要です。
 
2. サイレンサーの設置による騒音低減
サイレンサーは、空調室外機の排気ファン部分に取り付けることで排気音を低減する設備です。騒音低減効果は、サイレンサーの長さや内面積に大きく依存します。そのため、どの程度騒音を抑えたいかを目標に設定した上で、サイレンサーの長さや形状を設計することが重要です。
設置により、換気や排熱の機能を維持しながら、室外機から放出される騒音を効率的に減らすことができます。

3. 防音ルーバーによる騒音対策
防音ルーバーは、防音壁と同様に室外機の周囲を囲う用途で使用されますが、大きな特徴は空気の流れを優先して設計されている点です。
吸音材を組み込んだ羽を一定間隔で配置することで、ルーバーの隙間から出る音を低減しつつ、空気を通すことができます。そのため、換気や排熱が必要な設備に最適です。
ただし、開口面積が大きいため、防音壁ほどの防音効果は得られません。防音壁と防音ルーバーのどちらを採用するかは、目標とする騒音低減効果を基準に判断することが重要です。
 
4. ゴムマットの敷設
室外機の下に防振材を敷くことで、振動が屋上スラブや架台に伝わるのを防ぎます。振動は空気中の音とは異なり、建物の床や壁、柱などを伝わっていきます。そのため、室外機から離れた場所で突然騒音が発生し、思わぬ方向から苦情が届くこともあります。数値化しにくいものの、構造伝搬音の低減において体感上の効果は大きいです。機器の荷重に適した硬度のゴムを選定することがポイントです。

騒音源別の対策手法② チラー・冷却塔の対策

データセンターでは、サーバーから発生する大量の熱を処理するために大型のチラーや冷却塔が導入されています。これらの設備は、空調室外機よりもさらに大きな騒音を発生させます。特に冷却塔は、ファンの回転音に加えて水の落下音も発生するため、騒音の特性が複雑になる傾向があります。
対策の基本は空調室外機と同様ですが、設備規模や騒音レベルが大きいため、それに合わせた対策の設計が求められます。
 
1. 大型防音壁の設置
チラーや冷却塔は重量があるため、設備の規模に応じた防音壁を設置する必要があります。屋上設置の場合は荷重制限を考慮し、素材選定も必要です。また、定期点検のためのアクセス経路と防音性能を両立させる設計がポイントになります。
 
2. 防音ルーバー・サイレンサーの組み込み
冷却塔のファン開口部には、ダクトサイレンサーを設置します。冷却塔は大量の空気を取り込んで熱交換を行うため、通風量が大きくなります。圧力損失が大きすぎると冷却効率が低下するため、騒音低減効果と通風性能のバランスを考慮した設計が求められます。
 
3. 低騒音型機器への更新
チラーや冷却塔は振動も大きく、防振架台や防振ゴムによる対策が基本となります。加えて、新設や機器更新のタイミングでは、低騒音・低振動タイプの機器を選定することも有効です。インバータ制御の機器は負荷に応じて回転数を調整できるため、低負荷時には振動・騒音ともに抑えられます。

騒音源別の対策手法③ 非常用発電機の対策

非常用発電機は、データセンターにおいて最も対策が難しい騒音源です。
騒音レベルが100db前後と極めて高く、低周波音を多く含むため通常の防音壁では減衰しにくい上、大量の換気・排気が必要なため密閉もできません。従来の遮音・吸音・防振のアプローチでは、非常用発電機の騒音を防ぐのは困難なのが現状です。そこで注目されているのが「大型サイレンサー」という消音設備です。
 
◾️大型サイレンサーとは?
大型サイレンサーは、吸音を主な原理としながら、パネル構造による遮音効果も併せ持つ消音設備です。
空気の流れを確保しながら騒音だけを減衰させることができ、発電機室の吸気口・排気口に設置することで、換気性能を維持したまま高い消音効果を発揮します。
 
基本的な構造は、厚さ200mm程度の吸音パネルを複数列配置したものです。
空気はパネル間を通過できますが、その過程で音エネルギーが吸収・減衰されます。高周波から低周波まで幅広い周波数帯域の騒音に対応できるのが特徴です。
 
大型サイレンサーの効果を測る無響室での性能試験では、施工前に106dBだった騒音が施工後には66dBまで下がり、およそ40dBの減衰が確認できました。66dBは「少し大きめの会話」程度の音量にあたるため、非常用発電機の防音にかなりの効果があると言えるでしょう。

対策を成功させるための3つのポイント

ここまで騒音対策の基本的な考え方と、騒音源ごとの具体的な対策手法を解説してきました。ここでは、騒音対策を確実に成功させるために、押さえておきたい3つのポイントをご紹介します。

1. 現状の騒音レベルを定量的に把握する
まずは、現状の騒音レベルを正確に把握することが重要です。
敷地境界での騒音レベルを測定して規制値との差を把握することで、どの程度の対策が必要かが明確になります。複数の設備がある場合は、それぞれの騒音レベルを測定して主要な音源を特定することで、優先順位をつけた効率的な対策が可能になります。測定データに基づいて対策を設計することで、過剰投資を避け、確実に効果を出すことができるでしょう。
 
2. 騒音対策は施設の設計段階から検討をはじめる
施設の設計段階から騒音対策を想定しておくことで、スペースの問題や既存設備との干渉などの制約を受けることなく、より効果的かつコスト効率の良い対策が可能になります。
これからデータセンターの建設に携わる方は、騒音源を住宅から遠ざけるような機器配置の最適化や、防音設備の設置スペースの確保、そして搬入経路や施工性の確保といった点を計画段階で検討しておきましょう。
 
3. 早い段階で専門家に相談する
騒音対策は、早い段階で専門業者に相談することが大切です。
騒音対策は専門性の高い分野です。自治体への届出や規制値のクリア、技術的な設計・施工など、専門知識が求められる場面が多くあります。
早い段階から専門家と協働することで、現場の条件や周辺環境を踏まえて最適な対策を立てることができるでしょう。

まとめ

本記事では、データセンターの騒音対策について、基本的な考え方から具体的な対策手法まで解説しました。
騒音問題は複雑に見えることもありますが、原因を正しく把握し、適切なアプローチを選べば、解決への道筋は必ず見えてきます。本記事でご紹介した内容が、対策を検討される際の一助となれば幸いです。
騒音問題は、対策が遅れると近隣とのトラブルや施設運営上の問題につながります。「地域と共生するデータセンター」を実現するために、計画段階から確実な対策を講じましょう。


データセンターの騒音対策でお困りの方は、ブルアンドベアにご相談ください。特に非常用発電機の騒音問題には、当社の大型サイレンサーが効果的です。現地調査から設計・施工まで、貴社の施設に最適なソリューションをご提案いたします。