コラム
京都・鴨川沿い結婚式場の室外機騒音対策事例|景観に配慮した防音壁施工
目次
今回の記事では、ブルアンドベアの過去の施工事例として、京都市内の結婚式場で行った室外機騒音対策をご紹介します。
京都の鴨川沿いの施設では、夏に川床営業を行っている事業者が多くあり、近隣施設との距離の近さから空調室外機の騒音が課題になることがあります。今回の現場でも、川床をご利用のお客様から騒音に対する苦情の声が寄せられており、早期の対応が求められていました。
本記事では、まず仮設防音壁で騒音低減効果を確認し、そのうえで京都の景観に配慮した本設防音壁へ移行するまでの流れを解説します。室外機の騒音対策を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
鴨川沿いの結婚式場で発生した室外機の騒音問題
今回ご相談いただいたのは、京都市内の鴨川沿いにある結婚式場です。施設の隣には、夏の時期に川床を営業する宿泊施設がありました。
毎年、川床の季節になると「結婚式場に設置されている空調室外機の音が気になる」という声が、川床をご利用のお客様から寄せられていました。特に大型の宴会などで川床の席が室外機付近まで埋まると、室外機に近い位置で音を感じやすくなり、苦情が出ることもあったそうです。
室外機は敷地境界に沿ってL字に4台設置されており、隣接する川床との距離が近いことも課題でした。屋外にある設備機器の音は、周囲に建物があるか、川沿いのように開けた場所かによって伝わり方が変わります。そのため、単に音を小さくするだけでなく、どの方向へ音が届いているのかを確認しながら対策を検討する必要がありました。
対策の検討にあたっては、事前に騒音測定を行い、4地点で騒音レベルを確認しました。
- 地点1:72.0dB(掃除機の音と同レベルの騒音)
- 地点2:73.7dB(街頭と同レベルの騒音)
- 地点3:67.6dB(騒々しいオフィスの中と同レベルの騒音)
- 地点4:64.5dB(洗濯機の稼働音と同レベルの騒音)
仮設防音壁で早期の騒音対策を実施
最初の対策として、川床の営業時期に合わせて仮設材による防音対策を行いました。使用したのは、工事現場などでも使われる吸音ガードフェンスです。
仮設対策を選んだ理由は、大きく2つあります。
1つ目は、ご依頼をいただいた結婚式場が賃貸物件であり、将来的な撤去や原状復旧を考慮しておく必要があったことです。撤去を前提とできる仮設材は、この条件に適していました。
2つ目は、京都市内という立地です。京都市の景観条例では、仮設物か建築物かによって規制の厳しさが異なるため、まずは仮設物として川床の時期だけ仮設防音壁を設置することで、近隣への影響を早く抑えることを優先しました。
川床の営業が終わった後は、仮設材を一度撤去しています。翌年も川床の時期に合わせて仮設防音壁を設置し、2シーズンにわたって効果の確認を行いました。
このように、すぐに本設工事へ進むのではなく「現場の状況や法規制、建物の使用条件を踏まえて段階的に対策すること」も、騒音対策では有効な選択肢のひとつです。
このように、すぐに本設工事へ進むのではなく「現場の状況や法規制、建物の使用条件を踏まえて段階的に対策すること」も、騒音対策では有効な選択肢のひとつです。
仮設対策で確認できた騒音低減効果
仮設防音壁の設置後、騒音測定を行い、対策前後の数値を確認しました。測定では、複数の地点で施工前と施工後の騒音値を比較しています。
測定結果では、以下のような騒音低減が確認されました。
| 測定地点 | 施工前 | 施工後 | 減衰量 |
|---|---|---|---|
| 地点1 | 72.0dB | 60.8dB | -11.2dB |
| 地点2 | 73.7dB | 58.8dB | -14.9dB |
| 地点3 | 67.6dB | 58.3dB | -9.3dB |
| 地点4 | 64.5dB | 56.9dB | -7.6dB |
最も大きい地点では、14.9dBの低減が確認されています。また、受音点として重要視していた川床の地点4では、64.5dBから56.9dBまで低減することができました。
56.9dBは、日常会話程度の音の大きさです。音の感じ方は周囲の環境や時間帯、人によって異なりますが、数値のうえでも体感のうえでも負担を感じにくい状態に近づけることができました。
56.9dBは、日常会話程度の音の大きさです。音の感じ方は周囲の環境や時間帯、人によって異なりますが、数値のうえでも体感のうえでも負担を感じにくい状態に近づけることができました。
このように、仮設対策であっても現場の条件に合った位置と高さで防音壁を設置することで、一定の騒音低減効果が期待できます。
本設防音壁へ移行した理由
2シーズンにわたる仮設防音壁で効果が確認できたため、次の段階として本設防音壁の計画を進めました。2年目の仮設防音壁の撤去に合わせて、本設防音壁を設置する流れです。
本設へ移行した背景には、継続的に施設を運営していくうえで、毎年仮設材を設置・撤去するよりも、恒久的な対策を行うほうが望ましいという事情がありました。そのうえで、景観条例に沿い、かつ最終的な撤去も可能なプランを用意できたことが、本設防音壁へ移行する決め手となりました。
ただし、仮設の段階から前提となっていた「景観への配慮」と賃貸物件であるがゆえの「退去時の原状復旧」という2つの条件は、本設でも変わりません。むしろ恒久的な構造物となる本設防音壁では、この2条件をどう満たすかが計画の大きな課題となりました。
そこで、まずはもともとあったルーバー材と色や見た目を合わせた防音壁を計画しました。防音壁は面積が大きく、施設の外観の印象を左右しやすい設備です。防音壁だけが目立つのではなく、既存の外装と一体に見えるようにすることが、景観への配慮の具体的な答えでした。
色を検討する際は、日本塗装工業会の色見本を現地に持参し、既設のルーバー材に当てながら色味を確認しました。そのうえで施主様に確認していただき、完成後の見え方がイメージできるよう3Dイメージも作成しています。
3D図は施主様側から京都市へ提出され、確認資料として活用されています。施工してから「イメージと違う」となりやすい景観面の懸念を、施主様・行政と事前にすり合わせながら進められたことが、スムーズな本設移行につながりました。
景観に配慮した本設防音壁の仕様
本設防音壁には、ブルアンドベアの吸音パネル「QオンVZ」の50mm厚を使用しました。仕上げは焼付塗装とし、既存のルーバー材に近い色味になるように調整しています。
防音壁のサイズは、鴨川側が幅約4,100mm、隣接側が幅約2,720mm、高さは約3,397mmです。L字型に配置することで、室外機から川床側へ向かう音を抑えやすい構成としました。また、賃貸物件で退去時の原状復旧が条件となっていたため、固定にあたっては鉄骨に新たな穴をあけず、既存の穴を利用しています。
室外機の周囲を囲う場合は、吸気や排気を妨げないよう注意が必要です。空気の流れをふさいでしまうと、機器の効率低下や故障につながる可能性があります。今回の現場では、開放面のあるL字型の防音壁だったため、室外機の吸気や排気について特別な対策を行う必要はなく、音の伝わる方向を抑えることに集中することができました。
狭い現場での施工と安全面への工夫
施工時に課題となったのが「作業スペースの狭さ」です。現場は川沿いで足場や資材の配置に制限があり、狭い場所での高所作業をできるだけ減らす必要がありました。
この課題への対策として、まず川側には単管足場を組み、安全に作業できる環境を整えています。さらに、組立作業そのものを現場の外へ移しました。通常であれば設置場所でフレームを組み立てることもありますが、今回は隣接施設の駐車場をお借りし、防音壁をあらかじめ組み上げたうえで、レッカーで吊って設置する方法を採用しています。これにより、狭い場所での組立作業を減らし、施工の安全性と効率を高めました。
工程としては、仮設防音壁の撤去に1日、その翌日に本設防音壁の施工を1日で完了しました。工事期間の長期化が施設の営業に影響することがないよう、短期間で施工を完了できる計画を立案した点も、今回の現場で重視したポイントです。
施工後は苦情がなく運営できる状態に
仮設時の測定データでは最大14.9dBの低減が確認されていましたが、本設後もほぼ同様の効果が得られており、施工後は近隣からの苦情はなくなったと伺っています。騒音対策では、測定値として音が下がっていることはもちろん、近隣の人の「音が気にならなくなった」という体感も重要です。今回は、数値と実際の運営の両面で効果を確認できた事例といえるでしょう。
川床の季節のたびに騒音問題に悩まれていた施主様でしたが、いまでは音の問題を気にせず運営を続けていらっしゃいます。
賃貸物件という制約、施工スペースの制限、景観への配慮など、さまざまな課題のある事例でしたが、2シーズンの仮設での検証を経て、景観になじむ本設防音壁というかたちで着地させることができました。
騒音対策は現場の条件に合わせた設計が重要
室外機をはじめとする屋外機の騒音対策は、現場ごとに適切な方法が異なります。
- 室外機の台数や配置
- 音が届いている方向
- 近隣施設や住宅との距離
- 景観条例や建物の使用条件
- 吸気、排気への影響
- 施工スペースや搬入経路
これらの条件によって、適切な防音壁の高さや幅、配置、素材、施工方法を選択し、計画に落とし込むことが大切です。
今回の事例では、仮設防音壁で早期に騒音を抑え、その効果を確認したうえで、景観に配慮した本設防音壁へ移行しました。賃貸物件であることを踏まえ、鉄骨に新たな穴をあけず、既存の穴を利用して固定した点も、現場条件に合わせた工夫の一つです。
騒音対策では、音の問題だけでなく、建物の使い方や周辺環境、将来的な撤去の可能性まで含めて総合的に考えることが大切です。
まとめ
今回は、京都市内の鴨川沿いにある結婚式場で行った、室外機騒音対策の施工事例をご紹介しました。
騒音対策は、防音壁を設置して終わりではありません。周囲の環境や建物の使用条件、地域の景観ルールまで含めて、現場ごとに最適な進め方を組み立てていくことが大切です。今回のように仮設で効果を確かめてから本設へ移行する段階的なアプローチは、条件の厳しい現場でもリスクを抑えながら課題を解決していく方法のひとつです。
音の課題は、施設の運営や近隣との関係に直結します。安心して施設を運営し続けるためにも、問題が大きくなる前に現状を把握し、計画的に対策を進めましょう。
室外機・屋外機の騒音対策はブルアンドベアへご相談ください
ブルアンドベアでは、騒音測定による現状把握から、仮設材での早期対策、景観に配慮した本設防音壁の設計・施工まで、現場の条件に応じた騒音対策をご提案しています。
「まずはどの程度の騒音なのか知りたい」「景観や建物の条件が厳しく、対策できるか分からない」といった段階からのご相談も可能です。室外機や設備機器の騒音でお悩みのご担当者さまは、ぜひお気軽にお問い合わせください。