コラム
大阪府・ペット葬儀場の火葬炉騒音対策事例|足場が組めない現場でのクレーン吊り込み施工
目次
今回の記事では、ブルアンドベアの過去の施工事例として、大阪府内のペット葬儀場・火葬場で行った火葬炉の騒音対策をご紹介します。
施設の裏手は法面(のりめん:人工的につくられた斜面)になっており、その下には住宅街が広がっているロケーションです。法面下の敷地境界で50dB以下という条件を満たす必要があったのですが、建物完成後の工事であり、周囲が斜面になっているため足場を設けられないという施工上の制約がありました。
本記事では、スペースの制約が厳しい現場で騒音対策を実現するための考え方と、施工上の工夫について解説します。火葬炉や煙道など燃焼設備の騒音対策、あるいは足場が組めない現場での防音工事を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
課題となっていた火葬炉と煙道の騒音
今回の現場は、大阪府内に新設されたペット葬儀場・火葬場です。ご依頼主は、以前に別の葬儀施設で空調室外機の騒音対策をお任せいただいたお客様です。そのご縁から、今回もご相談をいただきました。
今回、騒音対策が必要となったのは、火葬場の火葬炉本体と、燃焼した排気を屋外へ導く煙道です。
一般的に、火葬炉やその煙道が発する騒音には、大きく以下のような2つの傾向があります。
今回の現場でも、騒音源となる火葬炉の稼働音・煙道の排気音がいずれも約80dB(走行中の電車内に相当する大きさ)と想定されていました。
-
稼働中は燃焼音や排気音が続く
火葬炉を稼働している間は、バーナーの燃焼音や排気音が継続します。静かな住宅地では、連続して聞こえる設備音が気になりやすくなります。 -
音の出口(煙突口)が高所にある
煙道の排気音は建物の上部から放射されるため、地上の塀や建物では遮られにくく、開けた方向へ遠くまで届きやすくなります。
今回の現場でも、騒音源となる火葬炉の稼働音・煙道の排気音がいずれも約80dB(走行中の電車内に相当する大きさ)と想定されていました。
そのうえ、火葬炉が設置されているのは店舗裏の法面に面した側で、法面のすぐ下には住宅街が広がっています。施設側から法面下の住宅側に向けて開けた地形になっているため、煙突口との間に音を遮るものがありません。火葬炉の稼働音・煙道の排気音をそれぞれ80dBとして予測計算を行ったところ、無対策の場合、住宅側の予測地点で63.5dBになると見込まれました。
今回の現場では、法面下の敷地境界で50dB以下という条件が設定されていたため、住宅街に面した施設として確実に条件を満たすためには、煙道からの音を抑える防音壁が不可欠という状況でした。
検討した対策
今回の現場の防音対策を検討した結果、煙道を覆う高さ6.9mの防音壁を設置することになりました。
設置した防音壁の寸法は、幅4.6m×奥行1.4m×高さ6.9mです。防音壁には、ブルアンドベアの製品である防音パネル「VZ100(ボード3重)」を採用しています。事前の予測計算では、この防音壁の設置により、次のような防音効果が見込まれました。
| 音源80dB稼働時 | 対策前(予測) | 防音壁設置後(予測) | 低減量 |
|---|---|---|---|
| 火葬炉及び煙道 | 63.2dB | 48.1dB | 15.1dB |
| 煙突排気 | 51.3dB | 44.8dB | 6.5dB |
| 計 | 63.5dB | 49.8dB | 13.7dB |
最大の課題:防音壁をどうやって建てるか
しかし、この防音壁を「どうやって建てるか」が、今回の現場最大の難関でした。防音壁の設置を難しくする要因は、大きく2つあります。
そこで、検討されたのが、駐車場で防音壁をユニット状に先組みし、クレーンで吊り上げて設置する工法です。この方法であれば、設置場所での組立作業を減らし、足場を設けられない場所でも防音壁が設置できます。
幸い、施設の駐車場が防音壁を先組みするのに十分なスペースがあったため、防音壁の組立場所として活用することができました。
-
防音壁を固定するためのスペースの制約
防音壁を固定できる空間がパラペット(屋上やバルコニーの端にある低い立ち上がり壁)に限られていました。高さ6.9mの壁には風圧などに耐える十分な強度が必要ですが、足元の固定代(しろ)が限られていたため、強度を確保できる固定方法を慎重に検討する必要がありました。
-
周辺が法面という地形
周辺が斜面になっているため、足場が組めず防音壁の外側に回り込んで作業することができず、施工はすべて防音壁の内側から行う必要がありました。
そこで、検討されたのが、駐車場で防音壁をユニット状に先組みし、クレーンで吊り上げて設置する工法です。この方法であれば、設置場所での組立作業を減らし、足場を設けられない場所でも防音壁が設置できます。
幸い、施設の駐車場が防音壁を先組みするのに十分なスペースがあったため、防音壁の組立場所として活用することができました。
STEP1|駐車場でコの字型のユニットを先組み
「先組み+クレーン吊り込み」工法を成立させるためには、設置場所の近くに組立用のスペースを確保できることが重要です。まず、施設駐車場にクレーン車を据え付け、防音パネルなどの部材を現場へ搬入しました。
次に、駐車場を組立場所として、防音壁のユニットを先組みします。高さ6.9mの防音壁を設置場所で一から組み上げることはできないため、2つのユニットに分割し、それぞれをコの字型に組み立てました。地上での組立は高所作業に比べて危険性が少なく、パネルの取り付けも確実に行えます。
STEP2|ユニットをひとつずつクレーンで吊り上げ、バルコニー部分へ降ろす
先組みしたコの字型ユニットを、クレーンでひとつずつ吊り上げ、建物のバルコニー部分へと降ろしていきます。ユニット単位に分けて吊り込むことで、足場のない場所にも高さ6.9mの防音壁を据え付けられるようにしています。
STEP3|バルコニー部の仮設足場から、吊り込んだユニットを内側で固定
先述のとおり、防音壁の外側は法面になっているので、足場を組んで外側から作業することができません。そのため、吊り込んだユニットの固定作業は、バルコニー部に仮設足場を組み、すべて防音壁の内側で行いました。
今回の事例のポイントは、「地上でできる作業」と「高所でしかできない作業」を切り分けたことにあります。組立の大部分を地上の駐車場で済ませ、高所での作業を吊り込んだユニットの固定に絞ることで、足場を設けられない現場でも防音壁を設置できるようになります。
防音対策に、ひとつとして同じ現場はありません。建物の構造や周囲の地形など、環境に起因する制約を詳細に把握し、現場の条件に合った計画を立てることで、本当に効果のある防音対策が実現します。
施設の防音対策を検討する際は、現場特有の条件に柔軟に対応できる信頼できる施工業者に相談することが何よりも大切といえるでしょう。
防音対策に、ひとつとして同じ現場はありません。建物の構造や周囲の地形など、環境に起因する制約を詳細に把握し、現場の条件に合った計画を立てることで、本当に効果のある防音対策が実現します。
施設の防音対策を検討する際は、現場特有の条件に柔軟に対応できる信頼できる施工業者に相談することが何よりも大切といえるでしょう。
施工時の工夫:高さ6.9mの防音壁を固定する方法
防音壁の固定にあたって課題となったのは、建物の構造上、防音壁を固定できるのがパラペット(屋上・バルコニーの端にある低い立ち上がり壁)に限られていたことです。
防音壁は6.9mとかなりの高さがあるため、足元を強固に固定する必要がありましたが、パラペットに固定するだけでは強度を保つことができません。また、周辺は法面で足場を設置するのも難しいため、防音壁を固定する方法を工夫する必要がありました。
防音壁は6.9mとかなりの高さがあるため、足元を強固に固定する必要がありましたが、パラペットに固定するだけでは強度を保つことができません。また、周辺は法面で足場を設置するのも難しいため、防音壁を固定する方法を工夫する必要がありました。
そこで採用されたのが、筋交い(すじかい:柱の間に斜めに入れる補強材)で構造を補強し、建物の壁面や天井にも接続して固定する方法です。こうすることで、パラペットだけに頼らず、壁面・天井を含む複数の箇所で建物とつなぐことができ、高さ6.9mの防音壁でも安定性を確保しながら設置しています。
また、高所でユニットを吊り込むため、クレーンの据付位置や作業手順を踏まえた施工計画も重要でした。防音壁そのものの設計だけでなく、吊り込みから固定までの手順を含めて計画できたことが、迅速かつ確実な施工の決め手になったと実感しています。
施工後の効果:敷地境界で50dB以下の条件をクリア
施工後、火葬炉2台を稼働させた状態で騒音測定を行いました。
測定を行ったのは、法面下の住宅街に沿った敷地境界の3地点です。
施設にもっとも近い敷地境界付近をA地点とし、そこから住宅街に沿って離れる方向にB地点・C地点を設定しました。
測定を行ったのは、法面下の住宅街に沿った敷地境界の3地点です。
施設にもっとも近い敷地境界付近をA地点とし、そこから住宅街に沿って離れる方向にB地点・C地点を設定しました。
測定結果は次のとおりです。
| 測定内容(火葬炉2台稼働時) | 測定値 |
|---|---|
| 敷地境界付近(A地点) |
53.0dB (環境音を含む) |
| 環境音(暗騒音)※火葬炉停止時 | 50.6dB |
| 火葬炉2台の発生音(環境音の影響を除いた算出値) | 49.3dB |
| B地点 | 49.6dB |
| C地点 | 48.3dB |
実際に測定する段階で明らかになったのが、敷地境界のすぐそばに水路があり、火葬炉を停止した状態でも環境音(暗騒音)が50.6dBあったことです。つまり、その場所でもともと聞こえている水音などのほうが、基準値の50dBより大きい状態でした。
そこで、火葬炉稼働時の測定値53.0dBについて、環境音の影響を補正しました。その結果、火葬炉2台から発生した音は49.3dBと算出され、敷地境界で50dB以下という条件を満たしました。
周波数別の測定グラフを見ると、1kHz以上の帯域では火葬炉稼働時の測定値が環境音とほぼ同水準に収まっており、2kHz以上ではむしろ環境音を下回っています。
低い周波数帯では稼働時の値が環境音を上回っているものの、全体の測定値としては環境音との差はわずかで、火葬炉の音が周囲の環境音に紛れるレベルまで抑えられていることが分かります。
低い周波数帯では稼働時の値が環境音を上回っているものの、全体の測定値としては環境音との差はわずかで、火葬炉の音が周囲の環境音に紛れるレベルまで抑えられていることが分かります。
敷地境界では、耳を澄ませても火葬炉の稼働音をまったく聞き分けられない状態でした。
事前の予測計算では、防音壁の設置により住居地点の騒音が63.5dBから49.8dBへ、13.7dB低減すると見込んでいましたが、施工後の実測でも環境音の影響を除いた火葬炉2台の発生音は49.3dBと算出され、50dB以下という条件を満たしていることが確認できました。
事前の予測計算では、防音壁の設置により住居地点の騒音が63.5dBから49.8dBへ、13.7dB低減すると見込んでいましたが、施工後の実測でも環境音の影響を除いた火葬炉2台の発生音は49.3dBと算出され、50dB以下という条件を満たしていることが確認できました。
今回のように、現場によっては環境音(暗騒音)が基準値を上回っているケースもあります。こういった場合は、騒音の評価時に対象の設備音と環境音を切り分けて測定・判断することが大切です。
足場が組めない現場の騒音対策で押さえておきたいポイント
今回の事例での騒音対策のポイントを整理します。
- 煙突・煙道など音の出口が高所にある場合は、音源の高さと音を受ける方向に合わせて防音壁の位置・高さを計画する
- 足場が組めない現場では、ユニット先組み+クレーン吊り込みなど施工方法から検討する
- 固定箇所が限られる場合は、筋交いや建物との接続で構造全体の強度を確保する
- 評価の際は環境音(暗騒音)と設備音を切り分けて測定する
まとめ
今回は、大阪府内のペット葬儀場・火葬場で実施した、火葬炉・煙道の騒音対策をご紹介しました。
「建物完成後の工事」「固定できるのはパラペットのみ」「周囲は法面で足場が組めない」と施工条件の厳しさが重なった現場でしたが、駐車場でユニットを先組みし、クレーンで吊り込む工法により、高さ6.9mの防音壁を安全に設置し、敷地境界50dB以下という条件をクリアすることができました。
「うちの現場は条件が特殊だから対策できないのではないか」と感じられるケースでも、施工方法の工夫によって解決できる場合は多いです。条件に制約がある現場ほど、なるべく早い段階で施工業者に相談することで、より迅速で確実な騒音対策が行いやすくなりますので、防音対策を検討中の方はぜひ参考にしてください。
火葬炉・燃焼設備の騒音対策はブルアンドベアへご相談ください
ブルアンドベアでは、騒音測定による現状把握から、基準値を踏まえた防音壁の設計、足場が組めない現場での施工計画まで、現場の条件に応じた騒音対策を一貫してご提案しています。
「基準値をクリアできるか事前に知りたい」「立地や建物の条件が厳しく、施工できるか分からない」といった段階からのご相談も可能です。火葬炉をはじめとする設備の騒音でお悩みのご担当者さまは、ぜひお気軽にお問い合わせください。