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コラム

東京都葛飾区柴又・観光拠点施設の室外機騒音対策事例|稼働前に理論値から設計した防音壁施工

ブルアンドベアの過去の施工事例をご紹介するシリーズとして、東京都葛飾区柴又の観光拠点施設で行った空調室外機の騒音対策を取り上げます。


今回ご紹介する事例の現場は、葛飾柴又の帝釈天題経寺からほど近い場所の観光施設です。周辺は閑静な住宅街で、敷地はマンションに隣接し、近くには幼稚園もあることから空調稼働前の早期の段階での室外機騒音への対策をご依頼いただきました。
 

本記事では、騒音を実測できないなかでの理論値からの設計、限られたスペースによる熱こもり対策、観光地ならではの景観への配慮という3つの課題を一つずつ解決し、施工後の測定で基準値をクリアするまでの流れを解説します。

新築・改修段階での騒音対策を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。

空調稼働前の室外機の騒音対策

今回ご依頼いただいたのは、東京都葛飾区柴又にある観光施設です。


江戸時代から続いてきた料亭の跡地に建てられた施設で、周辺は閑静な住宅街。敷地はマンションと隣接し、周辺には幼稚園もあります。施設の空調用の室外機から発生する騒音が懸念されたため、施設の整備段階、空調の稼働前の時点で防音対策のご依頼をいただきました。
 

対象となった室外機は計10台。設置場所が7台・1台・2台の3箇所に分かれているため、防音壁も3箇所に設置する計画としました。

現場の用途地域は商業地域で、営業時間帯にあたる夕刻(20:00〜23:00)の基準値は55dBです。ただし、同じ用途地域でも、周辺にどのような施設があるかによって求められる基準値は変わることがあります。
 

今回の現場は近隣に幼稚園があることから、規制上の基準により敷地境界線で求められる基準値はさらに5dB低い50dB未満が条件となっていました。

今回の現場における3つの課題

今回の現場では、防音壁の設計にあたって大きく3つの課題がありました。
  1. 対策前の騒音値を実測できない
    室外機をはじめ、一般的な騒音対策では、まず現地で騒音測定を行い、現状の数値を把握したうえで対策を設計します。しかし今回は空調の稼働前の工事のため、基準となる「対策前の騒音値」そのものが存在しませんでした。対象となる騒音が存在しない時点からの騒音対策は、より緻密な計画が求められます。
     
  2. 防音壁のスペースが限られ、熱がこもりやすい
    施設の設計段階で防音壁を立てるための十分なスペースが確保されていませんでした。そのため、防音壁と室外機の距離が近く、防音壁で囲うと室外機の熱気がこもるおそれがありました。温度が上がりすぎると、室外機の性能そのものに影響があるため、防音性能と放熱の両立が必要でした。
     
  3. 周辺の景観と建屋のデザインへの配慮が必要
    葛飾柴又は、2018年に東京都内で初めて国の重要文化的景観に選定されたことでも知られる地域です。施設自体も景観に配慮したシックな外観であったため、防音壁が目立つことで建物の景観を損なう事態は避けなければなりませんでした。
騒音対策に、どの現場にも通用する「正解」はありません。画一的な対策をあてはめるのではなく、課題の一つひとつと向き合いながら、その現場に合った形で騒音を抑える計画を立てることが前提となります。

解決策①:室外機の容量から騒音の理論値を算出して設計

今回の課題でもっとも大きい「対策前の騒音値を実測できない」という課題に対しては、仮説を立てて設計し、施工後の測定で検証するという進め方を採用しました。

設計段階では、まず設置される空調室外機の容量から騒音の理論値を算出。そのうえで、敷地境界(高さGL+1.5m)での対策前・対策後の騒音値を測定点ごとに予測し、基準値の50dB未満を満たせる仕様を検討しました。

検討の結果、アルミ製の脱着パネル式防音壁を採用することになりました。防音・遮音パネルには、パネル厚70mmの防音パネル「QオンVZ」を使用し、フレームには70×70mm・100×70mm(板厚5mm)のアルミ材を採用しています。3箇所の防音壁(サイレンサー等を含む)の総重量は、それぞれ約1,990kg・約300kg・約860kgです。

解決策②:足元の着脱式パネルを設置し、熱の解放に対応

脱着パネルを採用したのは「防音することによって熱がこもりやすい」という課題への対策からでした。防音壁の足元に細長い着脱式のパネルを設置することで、熱がこもった際に下部のパネルを開けて熱気を逃がせる設計にしています。
防音壁と室外機の構成は、下の模式図のとおりです。

大型の室外機は排気ファンが本体の天面にあるため、まずファンの上にサイレンサーを取り付けて排気音を低減します。そのうえで、サイレンサーよりも高い位置まで防音壁を立ち上げることで、防音効果を高める構成になっています。
もちろん、こうした設計の場合は下部のパネルを閉めた状態では、開けた状態でも基準値まで騒音を抑えられるかも施工のポイントとなります。

解決策③:焼付塗装で景観と調和する仕上げに

周辺の景観と建屋のデザインに配慮するため、防音パネルの仕上げには建物の色味に合わせた焼付塗装を採用しました。事前に焼付けした色見本のサンプルをお送りし、外観の色と合わせて確認していただいたうえで施主様に色をご指定いただき、製作を進めています。

細部の仕上がりにも配慮し、パネル脱着用の金具にも同色の焼付塗装を施しました。防音壁は面積が大きく、施設の外観の印象を左右しやすい設備です。金具のような小さな部分まで色を合わせることで、建屋と一体感のある仕上がりになります。

観光地や景観保全地区など、外観への配慮が求められる現場では「ただ防音できればよい」というわけにはいきません。色や質感を周囲になじませる設計も騒音対策の重要な要素になります。


施工後の測定で基準値をクリア

防音壁の設置工事は2025年9月に実施し、設置後の同年11月に騒音測定を実施しました。時刻は20:00〜21:00。基準値が55dBマイナス5dBとなる、夕刻の時間帯です。
今回の防音壁には熱対策用の着脱パネルがあるため、測定は次の3つの状態で行いました。
  • パネル全開時(対策前相当の騒音値)
  • 下部パネルのみ解放時(熱対策時の騒音値)
  • パネル全閉時(対策後の騒音値)
3箇所の測定点(A・B・C)での結果は以下のとおりです。
測定点 パネル全開(対策前) パネル下のみ開(熱対策時) パネル全閉(対策後) 減衰量(全開→全閉)
測定点A 60.2dB 50.1dB 48.3dB -11.9dB
測定点B 52.8dB 50.0dB 48.6dB -4.2dB
測定点C 53.0dB 51.6dB 49.8dB -3.2dB

解決策①の検証:パネル全閉で3地点すべて基準値50dB未満を達成

最も騒音値が大きかった測定点Aでは、60.2dB(普通の会話と同程度の音の大きさ)から48.3dBへと、11.9dBの低減が確認されました。これは、静かな室内と同程度の音の大きさです。全閉状態では3地点すべてが50dB未満となり、基準値をクリアできています。

測定点B・Cの周囲の暗騒音(室外機以外の周囲の音)は48.8dBなので、対策後の騒音値は暗騒音とほぼ同等の水準まで下げることができています。

測定点 設計時の予測値(対策前→対策後) 実測値(パネル全開→全閉)
測定点A 61.9dB → 46.9dB 60.2dB → 48.3dB
測定点B 61.5dB → 47.0dB 52.8dB → 48.6dB
測定点C 59.1dB → 46.1dB 53.0dB → 49.8dB
設計段階に算出していた理論値との比較でも、防音壁が想定どおりに機能したことが確認できます。

対策後の実測値と設計時の予測値との差は、いずれの測定点でも1.4〜3.7dBに収まり、予測どおり基準値の50dB未満を達成しています。

稼働前の理論値から設計した防音壁でしたが、結果として計算どおりの数値を達成できました。事前の条件整理と仮説の精度が、稼働前の騒音対策の成否を左右するといえます。

解決策②の検証:下部パネルを開けた熱対策時の状態でも大きく低減

表の「パネル下のみ開」の列に示したとおり、熱対策で下部パネルのみを開けた状態でも、3地点とも全開時から50dB前後まで低減することができました。放熱のため下部パネルを開けた状態でも、一定の騒音低減効果を維持できたことが数値からも立証できています。

至近距離での測定でも効果を確認

さらに、室外機の排気ファンの上にはサイレンサーを設置しています。至近距離での測定では、室外機本体付近にあたる下部で82.8dB、サイレンサーの排気部にあたる上部で68.2dBと、下部と上部で約14.6dBの差が確認されており、サイレンサーによる排気音の低減効果がうかがえます。

施工時の工夫:図面のみの事前調整と想定外への対応

今回は工期があらかじめ決まっており、施工前に現地で何度もすり合わせを行うことはできませんでした。施工前のやりとりは図面上のみ。そこで、仮組みした防音壁の写真を事前にお送りするといった方法で、完成イメージのすり合わせを行いました。

それでも、当日の現場で想定外の状況が発覚することはあります。

今回は、アンカー固定用の柱がくるはずの位置に空調配管が通っていることが当日に判明しました。このときは、急遽京都から部材と塗料を取り寄せ、現地で加工・塗装を行うことで対応しています。


新築・改修工事では、防音工事以外にも多くの工程が同時に進むため、図面段階では見えない干渉が起こることもあります。事前の入念なすり合わせに加えて、現場での柔軟な対応力を備えておくことも、工期を守るうえで欠かせない要素といえるでしょう。

稼働前の室外機騒音対策は「事前の設計」が重要

今回の事例から学べる、稼働前段階での騒音対策の検討ポイントを整理します。
  • 用途地域の基準値に加え、幼稚園・学校・病院など周辺施設による上乗せ条件を確認する
  • 稼働前で実測できない場合は、機器の容量から理論値を算出して設計する
  • 防音壁の設置スペースは施設の設計段階から確保しておく(スペースが狭い場合は放熱対策が必要)
  • 景観や建屋のデザインに合わせた塗装・仕上げを検討する
  • 施工前のすり合わせが図面のみになる場合は、仮組写真などで完成イメージを共有する
稼働前の現場は、実測できないという難しさがある一方、設計段階から騒音対策を組み込めるという大きな利点があります。稼働後に苦情が発生してから対応する場合と比べて、近隣との関係を損なうリスクを抑えながら対策を進められます。

まとめ

今回は、東京都葛飾区柴又の観光拠点施設で行った、空調の稼働前の段階からの室外機騒音対策の施工事例をご紹介しました。


稼働前で騒音の実測ができない中、室外機の容量から理論値を算出して防音壁を設計し、施工後の測定では3地点すべてで基準値(敷地境界線で50dB未満)をクリアすることができました。熱こもりへの対応や景観への配慮など、現場の条件を一つずつ設計に反映したことが、計算どおりの結果につながったと考えています。


騒音の実測ができない稼働前の段階でも、機器の仕様から騒音を予測して対策を設計することは可能です。施設の稼働後に騒音問題が発覚してから対応するよりも、設計・整備の段階から騒音対策を組み込む方が、騒音トラブルを未然に防ぐためには有効です。

建物の新築・改修における早期の段階での防音対策を検討したい方は、早めに信頼できる防音対策の専門家に相談しましょう。

新築・改修時の室外機騒音対策はブルアンドベアへご相談ください

ブルアンドベアでは、騒音測定による現状把握から、稼働前の現場での理論値に基づく設計、景観に配慮した防音壁の製作・施工、施工後の効果検証まで、現場の条件に応じた騒音対策をご提案しています。


「新築予定の施設で騒音が基準値を超えないか不安」「まだ図面しかない段階だが相談できるか知りたい」といった段階からのご相談も可能です。室外機や設備機器の騒音対策を検討中のご担当者さまは、ぜひお気軽にお問い合わせください。
 

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